皆さまから寄せられた質問の中から参考になる情報を掲載しています。
生活ルール・トラブル
- 共同の利益に反する行為とはどんなことをいいますか?
-
区分所有法第6条第1項では、区分所有者の義務について「区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。」と定められています。これに反する行為が「共同の利益に反する行為」に当たり、義務違反行為となります。なお、この規定は、専有部分の占有者にも適用されます。
具体的には、
- (ア)不当毀損行為
-
- 例:専有部分の2戸を1戸にするため耐力壁=戸堺壁を取壊すこと、ベランダ・地下室を新設、増設すること。
- (イ)不当使用行為
-
- 例:共用部分に私物を積上げること、専用庭を駐車場に改造すること、専有部分に危険物・重量物搬入すること。
- (ウ)プライバシーの侵害・生活妨害
-
- 例:騒音・悪臭・有毒ガスの散布、他人に迷惑を及ぼす動物の飼育や営業行為
- (エ)不当外観変更行為
-
上に例示した行為が直ちに「共同の利益に反する行為」に当たるかどうかの判断は難しいため、諸般の事情も考慮しながら、社会通念に照らして判断することが必要です。
- 組合員間での騒音トラブルに管理組合が関わる必要がありますか?
-
騒音問題をめぐるトラブルの場合、トラブルが及ぼす範囲によって、扱いを分けて対処する必要があります。特定の組合員間におけるトラブルは、基本的には当事者間で解決すべき問題と考えられます。ただし、このようなトラブルを解決するための話合いの機会を管理組合が設定することなども考えられます。また、カラオケ騒音のように複数の居住者に迷惑をかけている場合は、管理組合として対応するのが望ましく、理事長は理事会の決議により、この行為への是正を勧告、指示、警告などを行います。
特定の組合員間の騒音トラブルの場合には、個人としての人格権(個人の生命、身体、財産に対する権利)に基づく騒音の差し止め、損害賠償請求などを行うことなどができます。管理組合として行う場合の措置は、標準管理規約第66条(義務違反者に対する措置)や第67条(理事長の勧告及び指示等)定めがあります。ここでは義務違反者に対する措置や理事長の勧告及び指示等が定められていて、理事長はこれらの規定に基づき是正措置の勧告等を行います。これで改善がみられなければ、区分所有法第57条(共同の利益に反する行為の停止の請求)などの法的措置を検討することになります。
- マンションの敷地や共用部分の使用について、注意点があったら教えてください。
- 敷地や共用部分は、定められた通常の用法に従って使用しなければなりません。また、専用使用権が設定された部分であっても、利用の方法が規約などで制限されますので注意してください。敷地や共用部分は、区分所有者全員の共有となるため、勝手な使い方はできません。例えば、数戸の専有部分に通じる廊下は、各区分所有者は基本的に通行のためだけに使用することができますが、物品を置くことはできません。また、特定の区分所有者が敷地の一部や共用部分の一部を特定の目的のために使用できる専用使用部分を定めていても、敷地又は共用部分等の一部には変わりがないので、通常の用法に従い使用しなければなりません。専用使用部分でも、管理のために必要な範囲内で他者の立入りを受け入れることがあるなどの制限もあります。工作物の設置禁止や外観・用途の変更禁止などを使用細則に定めておきましょう。
- 学習塾を開きたいのですが、管理規約で用途が住宅専用となっています。開いても大丈夫でしょうか?
- 専有部分は所有者が自由に使用できる権利がありますが、周りの人に迷惑がかかる場合には、共同の利益を損なう行為ということになります。また、マンション居住者以外の不特定多数の方が出入りすることによって、セキュリティーの問題になるケースがありますので、住宅専用のマンションで学習塾を開くことは出来ないと考えておく方が無難です。
- 今はペットの飼育が禁止されているマンションに住んでいます。どんな事情でも飼ってはいけないのでしょうか、また、ペットの飼育を可能にするためにはどうしたらいいですか?
-
民法第206条で、マンションの専有部分は区分所有権の対象で、区分所有者は自由に自らの専有部分を使用することができると決められています。しかし、区分所有法第6条第1項で、区分所有者に「共同の利益に反する行為」の禁止が規定され、管理規約でペット飼育が制限されている場合は、この規定に当てはまります。
犬や猫の場合は、泣き声や臭いで他人に迷惑をかける恐れがあることや、マンションの構造が飼育に不向きであるなどの理由から、禁止しているところがあります。禁止されているにも拘らず、犬や猫を飼うことはルール違反であり、共同の利益に反する行為ということになりますので認められません。
しかし、ペット飼育の希望者が多い場合は、ペット飼育とルールの定め方との対応関係が適切であったかの検証と、規約改正の是非も含めて、管理組合としてペット飼育の可否について改めて検討することも必要になってきます。
そのための方法としては、ペット飼育の問題に関して、管理組合の内部に専門委員会を設けるなどして、アンケート等によりペット飼育の実態調査を行うとともに、組合員の意思を集約することが重要です。ペット飼育を認める意見が多いのであれば、ペット飼育のための具体的ルールを定めた細則も併せて検討し、その検討経過を広報等により十分啓蒙することが必要です。
- 敷地内に無断駐車が目立ちます。解決方法はありませんか?
- 敷地内の無断駐車は、多くの管理組合で課題になっています。無断駐車の対策としては、
- ・無断駐車を行わないよう広報などで啓蒙。
- ・規制看板や注意看板を設置。
- ・緊急車両以外の車両進入止め柵やフラワーポットなどの障害物を設置。
-
・無断駐車車両があったときは、無断駐車車両のワイパーに「警告票」を挟んで注意。
※「警告票」は直接車に糊付けしたりすると器物破損等のトラブルになったりするので注意が必要。
- ・駐車場不足が原因の場合は増設を検討する。
解決のための絶対的な決め手はありませんが、日頃から広報などで無断駐車について注意を呼びかけ、地道に取り組むことが大切です。
- 最近駐車場内で盗難やいたずらなどのトラブルが発生しています。どのような対策が有効でしょうか?
-
- ・駐車場内の照明を以前よりも明るくする(照明の死角を作らない)。
- ・植裁で陰になるような所は、剪定をして外部から見通せるようにする。
- ・有志を募り、夜間パトロールをする。
- ・駐車場内に警告書を掲示する。
- ・車の中に貴重品等を置かないようにする。
- ・防犯カメラを設置する(総会決議が必要です)。
- ・警察の協力を仰ぎ定期的に巡回してもらう。
などの対策が考えられます。
- 今住んでいるマンションで、敷地内の駐車場を借りています。マンションを売りに出したいのですが、駐車場付きという条件で売却することは可能ですか?
-
駐車場は専有部分として設定されていませんので、駐車場付きの条件で売却はできません。また、標準管理規約第15条で、他の区分所有者又は第三者に譲渡又は貸与すると、駐車場使用契約は効力を失うと決められています。
専用駐車場が定められている場合は、該当の住戸を買い受けた者は、そのまま専用駐車場を使用することができます。
- 集会室やキッズルームなどの共用施設を使うときの注意事項を教えてください。
-
共用施設とは、自転車置場、バイク置場、集会室、ごみ集積所はじめ、各マンションで設置されているキッズルーム、ゲストルームといった特有のものがあります。
使用に伴うトラブル防止のために、施設の用法に応じて、使用料、使用時間帯、人数等や使用の手続き、区分所有者の遵守すべき事項などを使用細則に定めておくことが必要です。マンション管理標準指針によると、各施設の状況に応じて、使用細則等によりルールを定めることとしています。
- 管理費などを滞納している人に対しての、督促の方法を教えてください。また、督促しても支払いに応じない場合は法的措置も考えていますが、具体的にはどのようなものがあるのでしょうか?
- 管理会社に委託している場合でも、最終的な滞納管理費等の回収の責任は、管理組合にあります。また、大事なことは督促ではなく回収ですので、滞納原因を把握し、原因に合わせた督促をすることが必要となります。管理費などは管理組合にとって共有財産を維持管理するための貴重な財源なので、滞納は組合運営にかかわる大きな問題と言えます。督促の方法としては、電話、訪問、書面の送付があります。
- 一般的な督促の順序は、
-
- ・相手方がうっかりしている場合もあるので、督促状を配布又は送付する。
- ・次に、自宅に電話で支払の督促。
- ・その後も滞納し続けている場合には、訪問して、直接督促を行う。
- ・内容証明郵便による督促
それでも支払いがない場合は、法的措置を考えなければなりません。簡単に利用できる制度として、小額訴訟、支払督促などといった制度や調停といった手続きなどがありますが、ケースによっては通常訴訟によらなければならないことがありますので、その際には、弁護士や司法書士に相談の上での対応が必要になります。
- 滞納している管理費などを請求しないと消滅時効になることがあるのですか?
- 滞納管理費等に対する支払請求権は、平成16年4月23日の最高裁判決において、各債権発生時点から起算して5年の時効が認定されました(5年の定期給付債権)。5年を超えると時効が成立し、滞納管理費等に対する請求権が消滅して債権回収が不可能になってしまいますので、管理組合としては十分注意しなければなりません。
- 管理費などを滞納している住戸が売りに出されてしまいました。滞納している管理費などは誰に請求したらいいですか?
- 滞納している住戸が売却された場合、この住戸の買主に滞納管理費を請求できます。請求を受けた買主はこの請求を拒否できません。区分所有法第8条では、区分所有者が共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の付属施設につき、他の区分所有者に対して有する債権又は規約もしくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権(法7条1項前段)、管理者がその職務を行うについて区分所有者に対して有する債権(同項後段)、管理組合法人がその業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権(同項後段)は、債務者たる区分所有者の特定承継人(区分所有者から売買、贈与等の個々の原因に基づいて区分所有権を承継取得する者)に対しても行うことができると定められています。
管理組合運営
- 管理組合は自治会とは違うものなのですか?
-
管理組合は区分所有法第3条に規定された、マンションの共用部分等の維持管理を目的とし、区分所有者全員で構成する団体です。区分所有者である限り管理組合から脱退することはできません。これに対し、自治会は同じ地域に居住する住民の互いの親睦を図ることや地域生活の向上を目的とする自治組織なので任意加入です。標準管理規約第32条十五号では、管理組合の業務に「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」をあげています。
居住者間のコミュニティ形成は、日常の管理を円滑化し、大規模修繕等を実施する際の合意を得やすいだけでなく、防災や防犯活動、近隣地域の円滑なつながりにも役立ちます。
- 総会はいつ、誰が開催するのですか?また、その際どのような準備が必要になりますか?
-
通常総会の開催については、原則としてマンションの管理者である理事長が、少なくとも毎年1回招集する義務があります。
一般的に通常総会では定型的な議案として、前期の事業報告と決算報告、今期の事業計画案と予算案、新役員選任案が諮られます。事業報告では前期の主な事業実績を報告書にまとめ、決算報告では前期の会計帳簿等から決算書を作成します。通常の決算書には収支計算書と貸借対照表が含まれます。事業計画案では今期予定の修繕工事等を含めて事業計画書としてまとめ、予算案では事業計画案に記載された事業を含む予算案を作成します。役員の任期が満了となる場合は新役員候補者を新役員選任案としてまとめます。
その他、管理規約や細則の制定・変更、共用部分の変更、管理委託契約の締結・更新、修繕工事等や各種の契約締結等の承認事項が総会の議案となります。これらの議案は一般的には理事会が準備することになりますが、かなりの準備が必要で、管理会社や専門家を起用して準備することが多いようです。
- 総会は区分所有者でも招集することができますか?
- 区分所有法では、集会(総会)は、管理者が招集するとされています。ただし、管理者でなくとも、区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上あれば、管理者に対し、会議の目的たる事項を示して、連名で集会の招集を請求することができます。この場合、管理者が請求の日から2週間以内に、請求の日から4週間以内の日を開催日とする総会招集の通知をしない場合は、区分所有者は連名で集会を招集することができます。
- 総会を開催するときは、通知を行う前に予告する必要がありますか?
- 法令や標準管理規約には定められていませんが、招集通知に先立ち、総会の日時や場所が決まってからなるべく早い時期に、組合員のスケジュール確保のため総会の開催予告を行うことが望まれます。マンション管理標準指針では、招集通知に先立ち、開催日時及び場所を予告していることを「標準的な対応」としています。
- 総会ではどのようなことが行われるのですか?
-
総会は、管理組合における中心的かつ最高の意思決定機関と位置付けられ、建物及びその敷地等の管理に関する重要な事項を原則としてすべて決議します。
総会で決議する事項については、区分所有法において特別決議事項と普通決議事項に区分されます。
特別決議事項としては、
- ・共用部分の変更(形状または効用の著しい変更を伴わないものは除く。)(区分所有法第17条)
- ・規約の設定・変更・廃止(区分所有法第31条)
- ・管理組合の法人化(区分所有法第47条)
- ・使用禁止・競売又は占有者の引渡しの訴訟(区分所有法第58条、59条、60条)
- ・大規模滅失の場合の共用部分の復旧(区分所有法第61条)
- ・建替え(区分所有法第62条)
- ・団地規約の設定(区分所有法第66条)
などがあります。
普通決議事項としては、
- ・特別決議事項以外の事項(区分所有法第39条)
- ・共用部の管理に関する事項(区分所有法第18条)
- ・管理者の選任・解任(区分所有法第25条)
- ・管理者への訴訟追行権授与(区分所有法第26条)
- ・共同利益に反する行為停止等の訴訟提起(区分所有法第57条)
などがあります。
- 総会で管理規約の変更や共用部分の変更、大規模修繕工事の実施などの議案を審議するにはどのような準備が必要ですか?
- 管理規約の変更や共用部分の変更など重要な議案を総会に諮る場合には、総会の議事を限られた時間で効率よく進めるためにも、アンケート調査や事前説明会によって組合員の意見を把握し議案に反映させておくことが重要となります。組合員の意見の把握が行えると同時に、変更案の趣旨について十分な理解を得ることも期待でき、総会では無用の質疑が避けられ、適切な判断と決議が期待できます。
- 総会における普通決議と特別決議の違いは何ですか?
-
区分所有法第39条第1項では、「集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する。」と規定され、この過半数で決する決議を普通決議と言います。これに関しては、標準管理規約では、総会の議決権総数の半数以上を有する組合員が出席し、出席組合員の議決権の過半数で決するとされています。
一方、特別決議は、区分所有法に規定された、共用部分の変更、管理規約の変更、管理組合の法人化、義務違反者に対する使用禁止や競売、大規模滅失の復旧は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上、建替え決議は区分所有者及び議決権の各5分4以上の多数でする決議のことをいいます。
- 議決権と組合員数は違うのですか?
-
議決権とは、各区分所有者が持っている総会において議決する権利のことで、当社では管理規約で議決権を1住戸1個と定めているケースが多数です。
例えば、100戸のマンションで1人の区分所有者が50戸持っており、残りの50戸は各区分所有者が1住戸ずつ持っている場合は、組合員数は51人となります。
管理規約で議決権が1住戸1個と定めた場合には、議決権総数は100戸となります。1人で50個の議決権を持っている区分所有者は、半数の議決権を持つことになります。
しかし、区分所有法第39条第1項では、集会の決議方法を、組合員総数及び議決権総数の各過半数とし、両方の数を満たすことを要件にし、1人の区分所有者が実質的な決定権限を持つことを回避しています。規約の制定や変更については、組合員総数及び議決権総数の両方について各4分の3以上の同意が必要です。
- 委任状と議決権行使書は違いがあるのですか?
- 組合員は総会における議決権行使の方法として、欠席する場合は、書面又は代理人によって議決権を行使することができます。その際に出すのが委任状や議決権行使書ですが、議決権行使書は、各議案に対し書面で自らが明確な意思表示をするもので、委任状は賛否の判断も含めて代理人に委任するものとなります。
- 委任の相手方に記載のない白紙の委任状は、どのような扱いにすればいいでしょうか?
- 一般的には、白紙委任状も有効な委任状として扱われています。白紙の委任状が提出されたときは、議決権行使について、提出を受けた管理者にすべて任されたものと考えて差し支えありません。
- 総会を欠席した組合員に、総会の審議内容や決定事項を知らせなくてはいけませんか?
- 管理組合の運営は管理規約と総会決議に基づいて行われるので、無用のトラブルを避けるためにも、総会の欠席組合員や占有者などにも総会決定事項を広く周知する必要があります。周知の方法としては、総会議事録の配付をもって広報する方法が一般的に行われています。
- 総会の議事録の作成や保管は誰がするのですか?
-
総会議事録は、総会の議長が作成しなければなりません。総会議事録には、議事の経過の要領と結果を記録し、議長と総会に出席した組合員2名の署名押印を要します。
議長は総会の運営で多忙ですので、役員の一人が書記として議事録案を作成したり、管理会社の担当者が記録することができますが、総会議事録の作成の責任は議長にあります。なお、標準管理規約では、総会の議長は理事長が務めるとされているため、通常、理事長が総会の議長として総会議事録を作成し、保管することとなります。また、組合員等の利害関係者の請求があったときは閲覧させなければなりません。保管場所は区分所有建物内の見やすい場所に提示しておく必要があります。
- 総会議事録は誰でも見ることができますか?また、どうしたら見ることができますか?
-
区分所有法では、集会の議事録を保管する者は、利害関係人の請求があったときは、正当な理由がある場合を除いて、議事録の閲覧を拒んではならないと定められています。
この利害関係人には、区分所有者・専有部分の占有者・売買等により区分所有権を取得しようとする者・専有部分を賃借しようとする者・管理組合に対し債権を有し、または管理組合と取引をしようとする者・区分所有権または敷地利用権の上に抵当権等の担保権を有し、又はその設定を受けようとする者などが含まれます。
- 総会の議長は誰がするのですか?
-
区分所有法では、「集会においては、規約に別段の定めがある場合及び別段の決議をした場合を除いて、管理者又は集会を招集した区分所有者の一人が議長となる」と定められています。
標準管理規約では、総会の議長は理事長が務めるとしていますが、組合員からの招集請求に基づき開かれる総会の議長は、総会の場で組合員の中から選任します。また、管理規約で、総会において議長を選出する旨の定めをすることもできます。
- 集会(総会)を開かずに、書面決議を行う方法を知りたいのですが?
- A.区分所有法では書面決議が行われる際の手続きとして、次の2つの方法を定めています。
- ・第1の方法は、まず書面決議方法を採用することの承諾を得る手続きを行います。全組合員の賛成を得なければならず、一人でも反対があれば、書面決議によることはできません。全組合員の賛成が得られたとき2段階目として、改めて具体の議案につき、書面で賛否を問うことになります。普通決議事項であれば過半数の賛成が書面で示されれば決議されたこととなります。
- ・第2の方法は、最初から具体の議案につき書面による決議を求め、その書面による決議の結果、議案について全員賛成であれば書面決議についての全員の承諾も得られたとして有効に決議が成立とする方法です。
建物等の管理に関する重要事項は、原則として、すべて総会の決議によって定めることとしていますが、例えば組合員数の少ないマンションにおいて、総会決議事項について全員に異議がないことが明らかで、緊急に総会の決議を要する事項が発生した場合に、組合員全員の承諾があることを要件に、書面または電磁的方法による決議ができます。
- 理事会はどんな役割をしているのですか?決議方法についても教えてください。
-
区分所有法では、管理組合法人の理事の規定を除き、理事や理事会に関する規定がありませんが、標準管理規約では、理事や理事会に関する規定が定められています。
理事会は、最高決議機関である総会の決議事項の執行機関と位置付けられ、理事長が理事の代表として、管理組合の業務を執行するに当たっての業務執行の具体的意思決定機関となります。
総会は年に1~2回しか開催されず、そこでの決議は自ずと重要または基本的事項となることが多いため、理事会が、管理組合の具体的な運営方針を検討し、策定する機関となります。標準管理規約では、理事会は理事のみで構成されますが、監事の出席は認められています。理事会は理事長が招集し、議長は理事長が務めます。理事会の会議は、理事の半数以上が出席しなければ開くことができず、その議事は出席理事の過半数で決めることができます。
- 理事会の議事録は必要ですか?組合員などに見せてもいいものですか?
-
理事会の議事録作成や保管については区分所有法上の規定はありませんが、標準管理規約では、理事会議事録は理事会の議長を務める理事長が作成、保管し、組合員等の利害関係者の要求によって閲覧させることが規定されています。
また、理事会議事録は総会議事録と同じ要領で作成し、理事長と理事会に出席した理事2名が署名押印することが規定されています。理事会議事録には組合員の個人に係わる事項が記載されていることがあり、そのような議事録では閲覧させるときには注意しなければなりません。
- 理事会の議事の広報はした方はいいですか?
-
理事会には一般の組合員は原則として出席できませんが、総会で選任した理事がどのように活動しているか関心が高い場合があります。そのため、理事会の開催日時、議題、審議内容や結果等を広報することが大切です。
また、区分所有者が必要に応じて議事録を閲覧できるような対応をすることも必要です。
理事会の議事について組合員に周知することは、管理組合運営の透明化に寄与し、開かれた民主的なものとすることになります。また、理事が組合員のため、誠実に職務を遂行していることを報告することにもなります。
- 役員にはどんな役割がありますか、また資格などは必要ですか?
-
区分所有法では、資格についての規定はありませんが、標準管理規約では、管理組合の理事及び監事である役員の資格を「マンションに現に居住する組合員」と限定し、総会で選任するとし、さらに「理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事の互選により選出する」となっています。
役員の種類としては、標準管理規約では理事長、副理事長、会計担当理事、理事、監事が示されており、理事長は管理組合を代表しその業務を統括し区分所有法に定める管理者とすること等、副理事長は理事長を補佐し理事長に事故があるときは代理し理事長が欠けたときはその職務を行うこと、監事は管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査し総会に報告すること等が規定されています。
- 理事や監事は何人くらい必要ですか、また、任期はどのくらいですか?
- 理事と監事の定員は、標準管理規約第35条関係コメントで
- ・おおむね5~10戸につき1名選出するものとする。
- ・人数の範囲は、最低3名程度、最高20名程度とし、○~○名という枠により定めることもできる。また、200戸を超え、役員数が20名を超えるような大規模マンションでは、理事会の中に部会を設け、各部会に理事会の業務を分担して、実質的な検討を行うような、複層的組織構成、役員の体制を検討する必要がある。
としています。
理事と監事の任期については、区分所有法では、管理組合法人の理事や監事の任期は2年と規定され、規約で3年以内に任期の規定が可能であるとされ、それ以外の規定はありません。
標準管理規約では「役員の任期は○年とする」としていて、管理組合の事情に応じて1~2年で設定することとしています。また、標準管理規約第36条のコメントでは「業務の継続性を重視すれば、役員は半数改選とするのもよい。この場合には、役員の任期は2年とする。』となっています。
- 理事長や副理事長などはどうやって選びますか?
-
区分所有法では、役員の選任方法について特に規定されていません。標準管理規約では、理事及び監事は、マンションに現に居住する組合員のうちから、総会で選任するとした上で、理事長、副理事長及び会計担当理事は理事の互選により選任するとしています。
したがって、このような規定を管理規約に規定している場合は、理事が総会で選任された後に理事会の互選により理事長等を選任することになります。
- 役員が一身上の都合で退任することになりました。欠員の補充は必要ですか?
- 管理規約に役員の定員が定められている場合、役員の任期中に退任によって役員数が不足したときは、欠員を補充しなければなりません。管理規約に「欠員が生じたときは、理事会で補充できるものとする。」と規定することで迅速な対応ができます。
- 役員に報酬を払うことができますか?
- 標準管理規約では、役員としての活動に要する必要経費の支払と報酬を受けることができるとしており、規定を設けて、総会で役員報酬予算の承認を得て支給しているところもあります。ただし、経費等の支払に関しては、トラブルが生じないよう支払に関する客観的な定めをする必要があります。
関係法令・規約
- 「区分所有法」という言葉をよく聞きますが、どのような法律ですか?
- 正式な名称は、「建物の区分所有等に関する法律」といい、主として1棟の建物を区分し、その各部分を所有権の目的とする場合の所有関係を定めるとともに、建物及び敷地等の共同管理について定めた法律です。
- 「マンション管理適正化法」というのはどんな法律ですか?
-
正式名称は、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」になります。マンション管理の重要性がクローズアップされ、区分所有法以外の行政法レベルのマンション管理の適正化を図るための法律が必要との判断からできた法律です。
マンション管理の適正化を推進するための措置として、
- ・管理組合の管理者等の相談に応じ、助言、指導等を行うことを業務とする国家資格であるマンション管理士資格を創設。
- ・マンション管理業者の登録制度を創設し、国がその業務を規制するとともに、管理業者の団体として(社)高層住宅管理業協会を指定して、自主的に業務の改善を行わせることとしています。この団体は管理業務に関する苦情の解決等にもあたります。
- ・国及び地方公共団体は、マンション管理の適正化に資するための必要な措置を講ずると決めています。
- 国土交通省が公表した「マンション管理標準指針」というのはどのようなものですか?
-
マンションは、管理組合の適正な運営を基に、居住のルールや会計が明確化され、長期修繕計画に基づいて適切な維持・修繕が行われなくてはなりません。しかし、マンションの管理組合や役員が、広範多岐にわたるマンション管理の具体的な内容を判断し、修繕項目を把握することは必ずしも容易ではありません。
このため、平成17年12月に国土交通省から『マンション管理標準指針』が公表されました。マンション管理の中でも特に重要性の高い項目について、次の5分野に分類して指針が示されています。
- ・管理組合の運営
- ・管理規約の作成及び改正
- ・管理組合の経理
- ・建物・設備の維持管理
- ・管理業務の委託
- 国土交通省が公表した「マンション標準管理規約」について知りたいのですが?
-
区分所有法では区分所有者が全員で団体(管理組合)を構成し、集会(総会)を開催し、管理規約を定め、及び管理者をおくことができる定められています。管理組合が管理規約を制定するに際しては、管理組合の状況や組合員の意見を把握し管理規約に反映させることが大切ですが、区分所有法や他の法律に沿った規定でなければなりません。
標準管理規約には、
- ・標準管理規約及び標準管理規約コメント(単棟型)
- ・標準管理規約及び標準管理規約コメント(団地型)
- ・標準管理規約及び標準管理規約コメント(複合用途型)
の3種類があり、管理組合が管理規約の制定、変更を行う際の参考として位置付けられています。特別の事情がない管理組合が管理規約を制定、変更する際は、この標準管理規約を参考とすることをお勧めします。
- 管理規約の制定・変更・廃止はどうすればいいのですか?
-
管理規約の制定・変更・廃止には、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会(総会)の特別決議が必要です。なお、規約の制定・変更・廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすときは、その区分所有者の承諾を得なければなりません。
「特別の影響を及ぼす」か否かの判断は、規約の制定・変更・廃止の必要性及び合理性と、これにより当該区分所有者が受ける不利益とを比較して、当該区分所有者が受忍すべき程度を越える不利益を受けると認められる場合は「特別の影響を及ぼす」と判断します。
- 専有部分と共用部分の区別がわかりにくいのですが?
- マンションの中で自分の持ちものとして法的に認められた部分が専有部分であり、専有部分以外の建物の部分と専有部分に属しない建物の附属物などが共用部分となります。内容についてはマンションごとに違い、管理規約に明記されるのが一般的です。共用部分は、区分所有法で「・専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物(法的共用部分)及び・第4条2項の規定により共用部分(規約共用部分)とされた附属の建物をいう」(第2条4項)と定めています。
- <法定共用部分の例示>
-
- 1.外壁、屋上、廊下、階段室、ロビー、ピロティ等の建物の部分
- 2.電気、ガス、上下水道等の配管(線)やエレベータ一、冷暖房・消火設備等、建物の附属物で専有部分に属しないもの
- <規約共用部分の例示>
-
- 1.建物内の集会室、管理事務室、倉庫など
- 2.敷地内にある別棟の倉庫、集会所建物など
- 毎月の管理費や修繕積立金は、どのように使われているのですか?
-
区分所有者は、敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるための費用を管理組合に納入しなければなりません。その費用のうち管理費は、管理委託費、経常的補修費などの通常の管理に使われます。また、修繕積立金は、大規模修繕に要する一時的な費用の負担を軽減するために管理費とは別に徴収するもので、計画的に積み立て、管理費と区分されています。修繕積立金の取崩しができるのは、一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕、敷地及び共用部分の変更などの特別の管理に要する場合に限られています。
管理費や修繕積立金の額については、各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出されています。
- 共有部分について、区分所有者はどのような権利があるのですか?
- 各区分所有者は、全員で共有している共用部分や敷地をその持分に応じて使用することができます。また、一部共用部分についても、それを共有する区分所有者がその持分に応じて使用する権利があります。共用部分についての各共有者の持分は、専有部分の床面積の割合によって決められます。
長期修繕計画と大規模修繕工事
- 長期修繕計画はどんな内容ですか?
-
長期修繕計画は、将来行う修繕工事を推測し、必要な修繕工事費を算定するものです。
専門家に調査・診断を依頼して、建物・設備等について、修繕工事等の履歴、経年に伴う劣化状況や社会情勢や生活様式の変化等に伴う区分所有者からの改良の要望などの状況を把握して、計画期間、修繕工事項目、修繕周期、修繕工事費、収支計画の項目について定め適切な資金計画を設定することを目的としています。
また、社会的背景や生活様式の変化などに対応して、マンションの性能(省エネ、バリアフリー、防犯対策等)を向上させるグレードアップ工事の項目についても計画に入れる場合もあります。
- 大規模修繕工事とはどのような工事ですか?
- 長期修繕計画に基づき通常10年から15年の周期にて、建物全体や建物の複数部分について行う大規模な修繕工事のことで、適正な建物維持・管理により居住者がいつまでも快適に生活できるようにすることや建物資産価値の維持を目的としたものです。
- 修繕委員会とはどのようなことを行うのですか。また必ず必要なのでしょうか。
- 大規模修繕工事は計画から完了まで2~3年かかり、役員が1年毎に交代することが多い理事会では、審議事項の引継ぎなどがスムーズに進まないことがあります。また、理事会では管理運営上の多種・多様な仕事がありますので、修繕工事計画検討の業務兼務は難しいと考えます。このため業務遂行期間を限定し修繕工事計画検討に特化した理事会の諮問機関として修繕委員会を構成する事が一般的になってきております。ただし、決定はあくまでも理事会になります。
- 修繕委員会のメンバーの選出方法や理事会との関係について教えてください。
- 修繕委員会のメンバーは、理事会役員や専門知識を持った方のみで構成するのではなく、広く居住者皆さんから募集し参加して頂くことが望まれます。修繕委員会においては、一般の居住者からの意見を積極的に吸い上げ大規模修繕工事の必要性、実施すべき工事の内容、実施時期、工事の金額とその資金計画、施工会社の選定などについて検討し、素案にまとめて理事会に答申します。
- 大規模修繕工事はどのようなタイミング、どのような手順で行うといいですか?
-
大規模修繕工事は長期修繕計画に則り、必要な時期が迫ってきたら、具体的な準備に入ります。建物の状況把握から工事対象項目の選定、工事費用の積立状況確認、委員会の設置、監理方式、施工業者の選定など修繕工事に取りかかる前に管理組合として決定しなければならないことが非常に多くあります。
これを修繕委員会等と連携しながら、理事会案として総会で決議を得た後に、施工会社等との契約を行い、工事に着手するのという流れが一般的です。大規模修繕工事は、長期修繕計画に定められた時期に行うのが目安となります。その2年程度前に修繕委員会を設置し、体制を整え準備を始めるといいでしょう。
- 現状の修繕積立金額のままだと、残高が不足することがわかりました。どうすればいいでしょうか?
- 現状の修繕積立金額で不足する場合は、次の方法が考えられます。
- ・修繕工事の実施設定時期を遅らせる。
- ・工事範囲を絞り込む。
- ・修繕積立金を一度に引上げるか、段階的に引上げる。
- ・不足額を一時金として徴収する。
- ・不足額分の借入れを行う。
一般的に大規模修繕工事を予定している年に、修繕積立金の累計額が必要修繕工事費を下回る場合は一時金の徴収や借入れを予定することとなります。資金の不足分を解決する方法として、区分所有者から一時金を徴収することが最もシンプルな方法として考えられますが、この方法はなかなか合意が得られにくい現実もございます。一般的には、仮設足場を必要とする工事項目を優先的に施工することに工事範囲を絞り込み、概算工事金額から現状の修繕積立金合計金額を差し引いた不足額に対し金融機関から融資を受けることが得策と考えます。
借り入れ先としましては、住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資や民間のマンション共用部分リフォーム融資を専門とするクレジット会社がございます。
現状の修繕積立金を返済原資として借り入れを行うことで、修繕積立金を値上げすることなく工事資金を補うことが出来ますので、より合意を得られやすい解決方法だと考えられます。資金不足が発生する恐れを減らすためにも、資金計画を定期的に見直すことは非常に重要です。
- コンサルタントを管理会社にお願いする場合のメリットはありますか?
- メリットとしては主に以下の点が挙げられます。
- ・管理を受託しているマンションについての情報を豊富に持っており、そのマンションの特徴、過去の修繕履歴、今回の大規模修繕に至った経過について深く理解しており、細やかな配慮が期待できる。
- ・施工会社に比べて、マンション管理の仕組みについてよく理解しており、区分所有者の合意形成や、工事中の細やかな配慮が期待できる。
- ・大規模修繕の後も継続して日常管理を委託していれば、大規模修繕工事の工事個所について後日不具合が発生しても工事会社への迅速な対応が期待できる。
- 大規模修繕工事の前に建物診断を行う目的を教えてください。
- 建物各部の仕上げ材の劣化状況を、目視調査を中心に、手の届く範囲は打検ハンマーによる打診(部分打診)を行い、「ひび割れ・浮き・欠損・鉄筋露出」などの劣化状況を確認します。加えて、各種機械試験(コンクリート中性化試験、タイル・塗膜付着力試験、シーリング材物性試験)を実施しそれらを基に各部位別に4段階判定をすることにより、適切な修繕工事行うための基礎資料とすることを目的としております。
- 工事着工前、工事中の注意点はありますか?
-
工事期間中は居住者の生活に不便が生じたり、近隣に迷惑がかかることがありますので、きめ細やかな対応をしなければなりません。また、居住者等の協力が必要な工事箇所もあるので、工事中に生じる事態を想定し、これを居住者に事前に知らせて理解を得ておきましょう。
工事説明会(居住者等の内部向けや必要に応じ近隣などの外部向け)を開催しておくと、工事が円滑に進められます。工事期間中は、全体の工事工程と、1週間単位の工事の内容を掲示するなど、居住者に対して積極的に広報し、工事に対する理解を得ることも大切です。
- 工事に関する広報活動は具体的にはどうすればいいですか?
-
工事の進捗状況をしっかりとお知らせしてコミュニケーションを十分取ることで、普通の生活を続けながら工事がスムーズに行われます。できるだけタイムリーに、きめ細かく工事の進捗状況をお知らせすることでより支障なく工事が進みます。
具体的には、
- 工事情報の収集
-
管理組合、工事監理者(専門家)、施工会社の現場代理人が定期に会議を開催する。
主な会議事項は
- ・工事工程の確認
- ・工事施工状況の確認
- ・居住者等からの苦情
- ・設計変更等の協議
- ・工事中の安全
- ・防犯体制
- 工事情報の伝達方法
-
工事に関する情報を居住者等に正確伝える方法について、その情報の内容に応じて適宜判断して選択します。これには専門家の助言などを得て行うのが望ましいでしょう。
主なものとしては
- ・工事専用のお知らせ看板
- ・各戸ごと配布のチラシ
- ・回覧板 など
- 工事完了時点や完了後に注意すべき点はありますか?
-
修繕工事が予定どおりすべて終わったら、その終了を管理組合として正式に確認した上で、工事の竣工日を組合員等の全員に通知し、「工事完了報告会」を開催して、経過報告などをします。工事完了報告会では、工事完了までの経過・決算、新しい設備の使用方法・注意点、アフターサービス、定期点検などについて報告します。修繕工事は、低下した性能・機能を当初の状態に近い状態に戻すものであり、修繕工事の完了は次の機能低下の出発点です。再び保守点検・清掃~経常修繕~計画修繕という行程を行う必要があるということを忘れてはなりません。
外壁とか屋上防水など最初の修繕計画にいたるまでの経験を生かして、十分ではなかった点を補うとともに、日常的な点検で発見される不具合への早急な対応を行い、質の良い維持保全を行うことが大切です。
- マンション全体の給水管の劣化が進み水漏れが多発しております。どの様に工事を進めたら良いでしょうか。
-
給水管の改修には、更新工事と更生工事(ライニング工法)があります。更生工事で計画を進める場合は、給水管の強度が求められる為、事前に給水管の一部を抜き取り、劣化状況を調査する必要があります。
更生工事は給水主管から、各住居内の給水配管までの全ての給水管内面に塗膜を施すことで、赤水防止や漏水防止の効果が期待できます。水道メーターから室内の給水管は専有部分ですが、みなし共用部分として一括して工事を進めることもできます。
- 修繕履歴とはどのようなものなのですか?
-
修繕工事の検討に当たっては、設計図書はもちろんですが、それまでに実施された修繕工事の時期・内容や図面、法定点検などの報告書、調査・診断の報告書などが時系列に整理・保管されていると大変役に立ち、効率的・効果的な検討を行うことができます。
管理組合が行う業務を定めている標準管理規約第32条第6号には、修繕などの履雇歴情報の整理及び管理などが掲げられています。この条文のコメントによると、修繕履歴は次のようなもので、整理して後日参照できるように管理しておくことが今後の修繕等を適切に実施するために有効な情報と説明しています。
- ・大規模修繕工事、計画修繕工事および設備改修工事等の修繕の時期、箇所、費用および工事施工者等
- ・設備の保守点検、建築基準法第12条第1項および第2項の特殊建築物等の定期調査報告および建築設備(昇降機を含む)の定期検査報告、消防法第8条の2の2の防火対象物定期点検報告書の法定点検などの維持管理の情報
マンション建替え
- マンション建替え円滑化法というのがあると聞きましたが、どんな法律ですか?
- この法律は、区分所有法第62条に定めるマンションの建替え決議がなされた後の事業段階における手続きなどを定めた法律で、平成14年12月に施行されました。この法律では、建替えを行う団体についての法的位置付けや運営ルール及びこの団体の意思決定に関することや契約行為などを定めるとともに、建替えで再建したマンションに、区分所有権や抵当権などの関係の権利を円滑に移行させるための法的な仕組みなどが定められています。
- マンションの建替えをしたいのですが、進め方がわかりません。
-
マンションは、建築後の日常管理や計画修繕を行っても、経年劣化の進行や機能・設備の陳腐化などに伴い、居住性の維持保全が困難になり、建替えを検討すべき時期が到来します。建替事業では、その要件、建替え参加者の確定、建替えに参加しない者の権利、建替え参加者の法律関係、建替事業の内容、建替え後の権利関係などが発生し、法律上の問題や手続き的に取り組まなければならない様々な課題を着実かつ迅速に対応していく必要があります。
建替え事業の実施には、総会において、区分所有法第62条に定める5分の4の特別決議が必要ですが、区分所有者の価値観の違いなどから、事業実施の大前提である合意形成には、非常に多くの時間やエネルギーを費やします。
建替えの発意から建替え決議に至るまでの基本的な合意プロセスは、
- •準備段階
- 「管理組合としての建替えの検討を行うことの合意を得ること」を目標とし、区分所有者有志が建替えに関する基礎的な検討(勉強会)を行う。
- •検討段階
-
建替えを必要として計画することの合意を目標とし、管理組合として修繕・改修との比較等を含めた建替えの必要性や建替え構想等を検討する。
標準管理規約第32条第4号では、「建物の建替えに係る合意形成に必要となる事項の調査に関する業務」を管理組合の業務と定めています。
- •計画段階
-
「建替え計画を策定するとともに、それを前提とした建替え決議を得ること」を目標とし、各区分所有者の合意形成を図りながら、建替えの計画を本格的に検討する。
建替え決議後のプロセスとしては、
- ・建替組合の設立
- ・権利変換計画の策定
- ・工事の実施
- ・再入居と新管理組合の設立
へと移行します。このように、建替事業の実施には、合意形成と法定手続きが必要になるなど、経験と専門的な知識が要求されますので、具体的な事業の検討に際しては、初期の段階から、これまでに建替事業に取り組んだ経験を持つ協力会社に支援を求めることが必要です。建替事業における合意形成の手順に関しては、国土交通省が平成15年1月に「マンション建替えに向けた合意形成に関するマニュアル」を公表しています。
- 建替えの費用は、どうやって作ればいいでしょうか?
-
建替えを検討する準備段階では、建替えを提起するための基礎的な調査などを実施します。標準管理規約第28条では、この費用を修繕積立金から支出できると定めています。
調査の内容は、再建マンションの設計概要、マンション取壊しや再建マンションの建築に要する費用の概算やその費用分担、再建マンションの区分所有権の帰属に関する事項などがあります。また、各マンションの実態に応じ、管理費から支出する旨を管理規約に規定すれば、管理費からも支出できます。
一定期間を経過したマンションの躯体の劣化や設備の老朽化の進行に伴い、通常の維持管理ではこれらの状況の変化に対応できないことと思われるケースが発生します。こうした場合に、建替えによる建物の更新が妥当かどうかについて、区分所有者にその内容を十分に説明し理解を得た上で、最終的には管理組合の一定の手続きを経て判断を下す必要があります。こうした過程のなかで、専門家等による技術的な調査、制度的手続きのアドバイスが、区分所有者間の合意形成には不可欠であり、こうした経費に修繕積立金を活用することができます。
- 建替えの決議案を総会で審議したいのですが、どのような準備をしたらいいですか?
-
総会で建替えの決議案を審議し採決するためには、区分所有法で法的な要件が定められています。これらの要件を満たすための議案及び資料を作成して、質疑に答える準備などをする必要があります。
具体的には、建替えの決議においては、次の事項を定めなければなりません。(区分所有法第62条第2項)
- ・新たに建築する建物(以下「再建建物」と言います。)の設計概要
- ・建物の取壊し及び再建建物の建築に要する費用の概算額
- ・前号に規定する費用の分担に関する事項
- ・再建建物の区分所有権の帰属に関する事項
- ・建替え総会の開催の1ヶ月前までに、建替え決議のための説明会を開催しなければなりません(区分所有法第62条第6項)。
この法定の説明会では、上記の議案の要領に加え次の事項も事前に通知した上で、十分な説明と質疑応答及び議論を確保するものとして義務付けられました。
この説明会で説明する事項は(区分所有法第62条第5項)
- ・建替えを必要とする理由
- ・建替えをしないとした場合における現建物の効用の維持又は回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む。)に要する費用の額及びその内訳・現建物の修繕計画が定められているときには、当該計画の内容
- ・現建物につき修繕計画があるときにはその金額
- 建替えの決議案の審議で、反対者がいた場合の対応を教えてください。
-
建替え決議案を審議する場合、反対者や賛成の意思を表明していない区分所有者(両者をまとめて「非賛成者」)がいる場合は、慎重な対応をしなければなりません。建替えについて、合意を得ていない区分所有者に対しては、積極的にコミュニケーションを図り、賛成できない理由や事情を正確に把握することが重要です。
その上で、賛成できない要因などを、建築計画や事業計画のなかで解決できるかを可能な限り検討しましょう。こうした対応をすることにより、できる限り多くの区分所有者が建替えに賛同し参加することができる計画にまとめあげることができます。建替え決議案を計画立案するに際しては、事前のアンケートや個別のヒアリングなどを数度にわたって実施し、各区分所有者の意思などを把握しておくことも必要です。このアンケートなどでの調査により非賛成者の具体的な考えや動向を把握することで、今後の建替え計画の見直しや、合意形成を進めるための対応案が検討できます。建替え計画を進めると同時に、これらの非賛成者への対応が適切に行われたかどうかが建替え決議の成立に大きく影響します。
- 建替えの決議が承認された後、立替え実施前にしておくことはありますか?
- 管理組合の総会で建替え決議が承認された後、建替えの参加者と非参加者とを確定しなければなりません。区分所有者全員が賛成して建替え決議が承認された時は、直ちに建替え工事に着手できますが、建替え決議が成立した場合であっても、一人でも反対者がいた時には、区分所有法第63条の定めるところにより、建替え決議に賛成した者が、建替えに不参加を表明した者などに対して売渡請求権を行使することによって反対者(不参加者)を排除し、全員賛成となった段階で建替え工事に着手できることになります。手続きとしては次の手順を踏む必要があります。
- 〈建替え参加の催告〉
- これは、建替え決議に賛成しなかった区分所有者(又はその継承人)に対して、建替えに参加するか否かの回答を書面で催告することです。この催告により非参加者を確定します。この催告期聞は2ヵ月とされています(区分所有法第63条第2項)。
- 〈売渡し請求権〉
-
2ヵ月の催告期聞を経過した段階で、建替え決議に賛成した者は、建替えに不参加の表明をした者及び催告期間内に回答しなかった者に対して、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すよう請求することができます。この場合、売渡し請求は、この請求が相手方に到達した時点で売買契約が成立しますので、建替え不参加者の区分所有権及び敷地利用権は、売渡し請求権を行使した者に移転します。
なお、建替え決議後2年以肉に正当な理由なしに建物の取壊しに着工しない場合は、この売渡し請求により区分所有権等を譲渡した者は、この権利を有する者に対して再売渡し請求ができます(区分所有権第63条第6項)。
- 〈建替え事業の実施〉
- 建替え決議後、建替え計画に基づき最終調整を行い、具体的な実施設計や事業計画を作成するなどを行った後は、マンション建替え円滑化法に基づき、建替組合の設立手続などに着手することになります。